元ホストは一途に愛する
斉木さんから改めて聞いた言葉は、おトミさんのお家で聞いたよりもくすぐったかった。


「他に俺に聞きたいこととか、気になることは?」
「……どうしてそんなに優しいんですか?」
「陽菜ちゃんと仲良くなりたいから」


斉木さんは、まるでセリフが決まってるみたいに私の心をくすぐることが言えてしまう。
私も斉木さんと仲良くなりたくて、でも自分が女として斉木さんと親密になれるとは思えなかった。


「陽菜ちゃんは?」


「……斉木さんの気持ちにはこたえられないと思います」
「好きになってもらえない?」


「あの……」
「うん?」
「私……その……男の人と寝ても、あまり気持ち良くなれないというか……それで、フラれたこともあって……」


斉木さんの優しさに甘えて何を打ち明けているのだろうかと、恥ずかしくなってそれ以上は言葉が続かなかった。
けれどお付き合いをするならば確実に待ち受ける私にとっての壁でもある。


斉木さんを困らせると思い、荷物を手繰り寄せて去ろうとしたそのときだ。
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