元ホストは一途に愛する
「それは相手の男が下手だっただけだよ」


斉木さんがやっぱり迷いのない言葉で言うから、私はポカンと彼を見つめた。
私は私が悪いのだと思い込んでいたけれど、そうじゃないと言ってもらえた気がしたのだ。


相手が上手いか下手かも、私にはわからないほどには経験したこともない。
けれど斉木さんに言われると、そうなのかもしれないと思うほど、何やら説得力がある。


「俺と、寝てみる?」
「え?」
「陽菜ちゃんが心配してることは、俺とは起こらないよ」
「あ、いや……そんなつもりでは……」
「でも、俺とのこと真剣に考えてくれたから体の相性まで心配してくれたんじゃない?」


どこまで勘のいい人なのだろう。
斉木さんのような男性に、優しくされて落ちない女子がいるのだろうか。
出会ってすぐ体の相性を確認するなんてこのとんでもない展開は私が招いたことである。


斉木さんは私を急かすこともなければ、強引に事を運ぶこともしない。
私の返事をただ優しく微笑んで待っている。


「……お願いします」
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