鱗好きの公爵令嬢は、幼なじみの無愛想な婚約者よりドラゴンがお好き
(だとしても、人に戻ったら全裸になってしまうのならときと場所を考えていただきたかったわ)

 いくら婚約者とはいえ全裸の男性に抱きつくなど、はしたないというのもあるがとにかく恥ずかしい。
 しかもその状況をウェッジにも見られたのだ。
 あとでからかわれるに決まっている。

(それにしても……リュシアンがこんなに話すのを久しぶりに見たわね)

 カップを置き改めてリュシアンを見る。
 あの美しいドラゴンが目の前の無愛想な男だとは……未だに不思議な気分だ。
 だがそれ以上にたくさん言葉を発する彼に軽く驚く。
 説明のためではあるが、二文以上の言葉を交わしたのはいつぶりだろうか。

「そういうわけで、このような体になっては結婚も難しいだろうと思い婚約解消を願おうかと思って呼び出したのだ」
「え!?」

 突然の婚約解消という言葉にミリアは驚く。
 事情を理解して欲しいということだと思っていたため、婚約解消など欠片も考えていなかった。

 というより、むしろ内心喜んでいたところだ。
 リュシアンが竜騎士であれば喜んで嫁ぐのにと思っていたが、まさかの本人がドラゴンになれる体質になった。
 呪いということでリュシアンの体が心配ではあるが、生きているドラゴンに触れる機会が増える状況はミリアにとって喜び以外のものはない。
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