鱗好きの公爵令嬢は、幼なじみの無愛想な婚約者よりドラゴンがお好き
「……ああ、いつ見ても素敵」

 ドアを開け見えた光景に感嘆の吐息をこぼす。
 そこには色とりどりの鱗が飾られていた。
 外からは見えないよう作られた明かり取りの窓。そこから差し込む光が鱗に反射し、その艶を美しく魅せる。

 うっとりとその収集物(コレクション)に近づき、赤い鱗を一つ手に取った。

「ああ! この艶! このひんやりとした質感! 全てが素晴らしいわ!」

 手のひらより少し小さいくらいの赤い鱗。
 これはファイヤードラゴンの鱗だ。
 ここには他にもウォータードラゴンの青い鱗やウィンドドラゴンの緑の鱗など属性竜の鱗がたくさんある。
 この全てがミリアの大事な宝物だ。

「はぁ……このすべすべした滑らかさ。そして色合い……好き」

 思わず頬ずりして鱗の素晴らしさを感じ取っていると、部屋の入り口付近で突っ立っているウェッジが頬を引きつらせていた。

「うわぁ……いつ見てもドン引きなんですけど……」
「うるさいわね。人前ではこんな姿見せないんだから良いでしょう?」
「私の前では良いってことですか?」
「そりゃそうよ。あなたは協力者なんですもの」

 元凄腕の冒険者であるウェッジは、二十という若さで大けがを負ったらしい。
 幸い回復したのだが、心配した身内により冒険者への復帰を反対されてしまった。
 それでも生活のためにはある程度の高収入が必要で、反対を押し切るしか道はない。
 そんなとき、丁度ミリアの護衛を探していたアロシュ公爵の目に留まったというわけだ。
< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop