鱗好きの公爵令嬢は、幼なじみの無愛想な婚約者よりドラゴンがお好き
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 リュシアンが遠征中も、度々セリエール侯爵家を訪れ花嫁修業に励むミリアは、家では着々と鱗の収集物(コレクション)を増やしていた。
 そんなある日、存在すら忘れかけていた婚約者から手紙が届く。

【大事な話がある】

 そう添えられたいつものお茶の誘い。
 一体何なのだろうと不思議に思いながらも、ミリアはセリエール侯爵家へ向かった。

「いらっしゃいませ、ミリア様。申し訳ありませんが、リュシアン様は少々立て込んでおりまして……。先に庭園へご案内するよう申し使っております」

 いつもは無愛想ながらも出迎えてくれるリュシアンの代わりに、家令が隙の無い笑みを浮かべて立っていた。
 いつもと違う様子にますます困惑しながらも、特に拒否する理由もないため庭園へと向かう。
 だがその後もいつもとは違うことが続いた。

「失礼致します。侍従殿に少々伝えておかねばならぬことがありまして……少々お借りしてもよろしいでしょうか?」
「え? ええ、姿が見える場所ならば良いと思うけれど……」

 家令の言葉を不思議に思いつつも、何か個人的に話したいことでもあるのだろうかと思い承諾する。
 花嫁修業の際にも付き従っているウェッジのことはこの家令もよく知っていて、たまに話しているのを見るから。
 護衛に支障がない範囲でなら離れていても問題ないだろう。

 紅茶を淹れてくれた侍女も離れていき、前回とはまた別の花々が咲き誇る庭園に一人残される。
 遠目にウェッジと家令の姿は見えるが、なんとも寂しい状況だ。

(こうなると、石像のような婚約者でもいるだけマシだったのかもしれないわね)

 しみじみとフレーバーティーの香りを楽しんでいると、近くの茂みがガサリと揺れた。
 気のせいと言うには大きな揺れで、何かがその茂みにいるのだろうことは疑いようもない。
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