青春メロディー ライン!

一、はじまり

 「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」

 賑やかな音楽と共に、体育館に新しい中学一年生が入ってくる。新入生の中に一人、氷のように固まっている女の子がいた。

 彼女の名は、黒川あかね。

 (うーん、吹奏楽部か…。日本伝統部か…)

あかねは、頭を悩ませていた。

あかねは、フルート歴3年。吹奏楽部に入ってフルートを続けるか、日本伝統部入って新しいことを始めるかで迷っているようだ。

 あれこれと考えているうちに、入学式は終わってしまった。

 次の日、各部活動のパフォーマンスがあった。しかし、入りたい部活は決まらなかった。

「どうしよう…。入部届は1週間後までにしか出せないから…」

 ますます悩みは深まった。

 その日の放課後、廊下で荷物を運んでいる時……

「あかねちゃん」

 (えっ…名前…呼ばれた…。
 あれ…この声…どこかで聞いたような…)

 そっと振り返ってみる。声の主は……吉開ちゆり。 

 ちゆりは、あかねが小学校の時の先輩だった。ふだんはあかねは全然話しかけることがなかったのが、今回初めて話しかけられ、あかねはとても嬉しかった。

 「吹奏楽部に入ってくれないかな?」
 「フルートやっていたみたいだね」

 となりにいたのは、すず先輩だった。2人とも中学二年生の先輩だ。

 先輩たちから期待の目で見られ、あかねはどうすることもできなくなった。


 (私、決めました…!)

 「私、吹奏楽部に入ります……!」

 
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop