ありふれたフラッシュ
 それから一週間、特に何も変わったことはなかった。何事もなかったかのように数多の授業を受けるだけだった。
 本当に何もなくて、ただの夢だったのだろう。日が過ぎるにつれ、その確信が大きくなっていった。
 普通なら安心するところなのだが、美紀は少し寂しさを覚えていた。あんな風に自分の気持ちを吐き出せたのも、あれほど本音をぶつけられたのも初めてだったからだ。嫌な気はしなかった。むしろ気持ち良さすら感じていた。
 それも全て自分の妄想だったと思うと、惨めでしょうがない。特に先生に告白されたところなんて、何を恥ずかしい勘違いをしているのだろう。あの漫画の悪影響を受けすぎている。これ以上不真面目になってはいけないと、気合を入れて書き殴るように板書をした。
 ちなみに今も疲れていることに変わりはなく、度々息抜きとして例の漫画の類いを読み続けていた。といっても電子書籍の登録や講入の方法が分からず、試し読み部分しか読めていない為、続きは妄想で埋めているのだが。授業中寝落ちしそうになる度、妄想で頭を活性化させる。正直それは勉強よりもずっと楽しいことだった。
 そんな中、もうすぐ長く厳しい夏期講習が始まる。皆が夏休み休気分で浮かれる中、美紀は一人憂鬱な気分だった。夏休みの消滅さえ願っていた。
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