Fixing a Broken Heart
 9月も、もう下旬。
 バイトに明け暮れた長い夏休みも、もうじき終わりだ。
 ダメ元で、家電量販店まで黒電話を持って行こうとバイクを走らせた私は、ひとけのない細い道でUターンした。
 自宅のすぐ近くに、“なんでも修理屋さん”という、普段なら、まるで石ころのように、全く目にとまらない店を見つけたのだ。
 やや古めかしい店のガレージでは、一人の青年がバイクの整備をしている。
 私は、あくまで生活の足としてバイクに乗っているだけなので、整備なのか、改造なのかはわからないが。
 青年は、私の視線に気付くと、こちらに近づいてきた。
「すみません。本当に何でも修理して戴けるんですか?」
 私の問いかけに、
「大抵のものは直せますよ。家電製品ですか?」
「これなんです」
 バイクのシート下から、緩衝材でぐるぐる巻きにした黒電話を取り出して彼に見せる。
「かなり古いですけど、直せますかね…?」
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