貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

一章


(神様、助けてください……わたしは今、人生最大のピンチを向かえています)

無数の視線が向けられる中、神頼みするしかなかった。
今は自分の意思でこの場を去ることすらできない。
ディアンヌは慣れないヒールを履いていた足の痛みに顔を歪める。
頭上からクスクスと馬鹿にするような笑い声が聞こえてきて、ディアンヌの目には悔しさからじんわりと涙が滲む。
つい先ほど自分の前世の記憶を思い出したけれど、今は何の役にも立たない。


「……大丈夫か?」


低く威圧感のある声がしてディアンヌは顔を上げる。
銀色の美しい髪と透き通る宝石のような青い瞳に目を奪われた。
差し出された手、その先を辿ると端正な顔立ちが見える。
氷のようにどこか冷たい表情を見て、手を取ってもいいか迷ってしまう。
しかし好意は無碍にできないと、ディアンヌは震える手を伸ばす。
なんとか男性の力を借りて、立ち上がることはできたが、足の痛みがひどく、うまく前に進めない。
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