貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
ディアンヌが「弟たちの面倒を見ないといけないから、すぐに帰らなくちゃ……」と言うと、シャーリーはまた吹き出すように笑っていた。
その後ろでは、カシス伯爵邸の侍女たちも笑うのを堪えている。

なんとか領地を建て直して、領民たちを守ろうとする両親の代わりに、家のことはすべてディアンヌがやっていた。
カシス伯爵邸の玄関まで辿り着いて立派な扉が開く。


「あなた何で来たの? 馬車はどこ?」

「馬車は壊れてしまったから、馬に乗ってきたのよ」

「ブッ、アハッ! 最悪じゃない、本当に貴族なの!? 信じられないっ」

「……」

「ああ、貴族じゃなくなりそうなんでしたっけ! あははっ」


ついに隠しもせずに笑い出したシャーリーに、ディアンヌは俯くことしかできなかった。
しかし今、メリーティー男爵家に馬車を新しく買ったり直すお金はない。
ディアンヌは笑みを浮かべながらも、モヤモヤする気持ちを必死に押さえていた。
そして表向きは親切にしてくれたシャーリーにお礼を言うために口を開く。


「ドレスや靴を貸してくれてありがとう、シャーリー。本当に助かったわ」

「いいのよ! フフッ、がんばってねぇ」


クスクスと響く笑い声は居心地のいいものではない。
もうシャーリーには何も頼まない方がいいだろう。
ディアンヌは今回の件でシャーリーの本音を垣間見たような気がした。
彼女はディアンヌを見下しているのだろう。
変わってしまった友人に大きなショックを受けつつも、借りたドレスをギュッと握りしめた。
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