【書籍化決定】貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
しかし姉のアンジェリーナは違った。
この環境に反発して、いつもあがいていたように思う。
感情を失っていく自分を見て姉が『リュド、守れなくてごめんね』と言ったことが、今でも忘れられなかった。
姉がリュドヴィックの心を守ろうとしてくれていたのだと、今なら気づくことができる。
姉の反抗的な態度も足掻いている姿も、子どもの頃は『無駄』だと思っていた。
けれど姉が街で助けたマリアはこうして公爵家で侍女長を務めるほどに成長した。
彼女はリュドヴィックを支えてくれているが時折、悲しそうな目でこちらを見ていることがある。
お礼を言おうにも姉はもう手の届かない場所にいるのだ。
(私は姉上に対して何も返せていない……)
アンジェリーナが公爵家を出ていくまで追い詰められたと知った時もリュドヴィックには何もできなかった。
自分を守ってばかり。
だからこそアンジェリーナが残したピーターを大切にしたいと思った。
少しでも恩返しがしたい。何も力になれなかった分も。
(……これは罪滅ぼしだ)
それにピーターが後継としていれば、結婚する必要もない。
今思えばリュドヴィックが結婚はしないことは、両親に対する唯一の反抗だったのかもしれない。