貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
(馬鹿にされても仕方ないわよね……こうしてドレスを貸してくれただけありがたいと思わないと)

ディアンヌはなんとか気持ちを立て直してから、心からの笑顔を作る。
シャーリーに深々とお辞儀して「ありがとう、シャーリー。必ず返すから!」と言って馬に乗った。
シャーリーは小さく振っていた手をすぐに下ろした。
ディアンヌを見送りながら、シャーリーは呟くように言った。


「あの子の、ああいうところが大っ嫌い……っ!」



* * *


メリーティー男爵領に帰る途中、ディアンヌの目からはポロリと涙が溢れた。
シャーリーと自分の境遇を嫌でも比べてしまう。
どうして自分ばかりこんなに苦労するのか、そう思ってしまうことが嫌だった。
今、ディアンヌは不安で仕方がない。
家族の未来がどうなってしまうのか、こんな自分が本当に嫁ぐことができるのか。
考えても考えても答えは見つからない。

(弱気になってはだめよ。わたしだけでも前を向かないと……!)

大好きな家族のためならなんだってできるはず。
そう言い聞かせながら、ディアンヌは乱暴に涙を拭った。
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