貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
メリーティー男爵領に着いたのは日が落ちた頃だった。
なんとか男爵邸にたどり着くことができて、ディアンヌは安心していた。
馬を馬小屋に戻して世話をしていると、物音に気がついたのか、弟のロランが心配そうに顔を出す。


「姉上、おかえりない……!」

「ただいま、ロラン。遅くなってごめんなさい。すぐに夕食の支度をするから……」

「そんなのいいよ。どこにいっていたの? いきなり出かけるっていうから心配したんだよ!」

「……ごめんなさい」

「姉上、悲しいの?」

「そんなことないわ。わたしは大丈夫よ」


ディアンヌは両親やロランたちに黙って出かけていた。
これ以上、心配をかけたくない。
ディアンヌが嫁ぐといえば、皆が反対するとわかっていたからだ。
先ほどの出来事を思い出すと胸が痛い。
しかし、ディアンヌはロランを心配させないように笑顔で頷いた。
それから馬の世話を任せて、ロランにバレないようにドレスとハイヒールを大切に運ぶ。
自室のクローゼットの奥に隠してから、夕食の準備に取り掛かる。
屋敷の中ではライ、ルイ、レイの三人が元気に走り回っていた。

そして騒がしい夕食を終えた頃に両親が帰宅する。
二人の顔は暗く、げっそりとしていて顔色が悪い。
嫌な予感がすると思いきや、告げられたのは表情通り悪い知らせだった。


「もうメリーティー男爵家は終わりだ」

「……そんな」

「王家に相談するしかあるまい。これ以上、領民に苦しい思いはさせたくないんだ」

「ディアンヌ、ロラン、不甲斐ない親でごめんなさいね。あなたたちには苦労ばかりかけて……」
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