貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
少し照れながらそう言った少年は、天使そのものだ。
あまりの可愛さに、にやけてしまいそうなのを堪えていた。
少しはディアンヌに対する警戒を解いてくれたのかもしれない。


「わたしはディアンヌ。あなたの名前を教えてくれる?」

「……ピーター」


しかし名前のことを問いかけた途端、ピーターの顔色は暗くなってしまう。
話題を変えようとディアンヌは誰を探しているのか、さりげなく問いかける。


「ピーターは誰かを待っているの?」

「うん……リュドを探しているんだ」

「……リュド?」


ディアンヌが首を傾けながら考えていると、再びピーターの目に涙が浮かぶ。


「ピーター、大丈夫?」


ディアンヌは無意識に腕を広げてしまう。
しかし、ピーターは何のことかわからないようだ。
とりあえずいつもの癖で抱きしめようと思ったが、逆に警戒されてしまったようだ。
ディアンヌとアンの記憶が混ざり合ったばかりだからか、馴れ馴れしい態度になってしまう。

反省しつつも腕を下げると、ピーターが控えめにピタリと体を寄せてくるではないか。
上目遣いでこちらの様子を確認してくるピーターの可愛さに、ディアンヌは心臓を撃ち抜かれていた。
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