貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
誰も見ていないのをいいことに、ディアンヌはピーターを抱きしめてすりすりと頬擦りする。
ピーターの涙がピタリと止まった。
嫌がりつつも、嬉しそうなピーターに思わず本音が漏れる。


「や、やめてよ」

「かわいすぎる……!」


デレデレのディアンヌは体を離して、今度は頭を撫でる。


「ピーターは天使みたいね!」

「……っ!」


ピーターはディアンヌの言葉を聞くと、ピタリと大人しくなる。
そのままピーターを愛でていると、遠くから女性の焦った声がした。


「ピーター様っ、ピーターさまぁ!」


侍女服を着ている四十代くらいの女性がこちらにやってくる。
そしてディアンヌに頭を撫でられているピーターを見て、目を見開いた。


「エヴァ……!」


ピーターはディアンヌなら離れると、エヴァと呼ばれた女性の元へと走っていく。
どうやら女性はピーターを探していたようだ。
エヴァは心底安心したという様子で、ピーターを抱きしめている。


「よかった……!」


ディアンヌはホッと息を吐き出して、横に置いてあったハイヒールを履いた。
二人にパーティーに戻るために声をかける。
 

「失礼します!」

「あっ……待ってください。お名前をっ!」
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