貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
当たり前のようにシャーリーはそう言って、ディアンヌから体を離した。
ディアンヌは悔しさから血が滲むほどに手のひらを握り込む。
シャーリーに怒りを感じていたが、心のどこかではショックを受けていた。
シャーリー学園で楽しく過ごした思い出が、砂のように崩れて消えていく。


「だってもう貴族じゃなくなりそうなのよねぇ? もし没落したら、わたくしの屋敷で雇ってあげてもいいわよ?」

「……っ!」

「そうじゃないんだったら、二度とわたくしに近づかないでね。非常識で馬鹿なアンタと親しいなんて思われたくないもの!」


ディアンヌを馬鹿にしながら高笑いするシャーリーに俯くことしかできなかった。
もし彼女の言う通り、そういう場であるなばディアンヌはこれ以上、誤解されないようにここにはいられない。
結婚相手を探すどころかメリーティー男爵家の家名にも傷をつけてしまう。
それだけは避けたかったからだ。
なんとか気力を振り絞り、頭を下げたディアンヌがその場を去ろうとした時だった。
足を動かすと、後側でドレスが引かれる感覚があった。

(いけないっ……!)
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