貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
そう思った時にはもう遅かった。
バランスを崩して、ディアンヌの体が前に倒れていく感覚があった。
後ろではシャーリーがディアンヌのドレスの裾を踏みつけていたのがチラリと見えたような気がした。
ハイヒールのせいで、満足な受け身も取れずにディアンヌは再び床に倒れ込む。
足が変な方向に曲がってしまったようで痛みに顔を歪めた。
ハイヒールが転がってパタリと倒れてしまう。


「プッ、アハハ! 大丈夫?」

「信じられない。下品だわ」

「あーあ、人の招待状を奪ったりするからよ。惨めねぇ」


シャーリーや他の令嬢たち馬鹿にするような笑い声が耳に届いた。
恐らくシャーリーに、ディアンヌのことを色々と吹き込まれてしまったのだろうか。
顔を上げると軽蔑するような視線を感じた。
二度も会場で転んでしまったディアンヌに送られる冷たい視線。
周囲に誤解されているせいか、手を差し伸べる者は誰もいない。
ディアンヌはすぐに立ち上がろうとするけれど、恥ずかしさと緊張で思うように体が動かなかった。
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