貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
廊下から響くのはよく通る声だった。
リュドヴィックが扉を開くと、そこから飛び込むように入ってきたのは、これまた豪華な衣装に身を包んだ男性だった。


「リュド……ここにいたのか、探したぞ!」

「……陛下」


豪快に笑う男性を見てリュドヴィックが呟いた言葉を聞いて、ディアンヌは口をあんぐりと開けたまま動けなかった。
エヴァや医師は深々と腰を折るのを見て、ディアンヌも頭を下げる。

(陛下……!? 陛下って国王陛下ってこと?)

国王が親しげに名前を呼ぶということは、リュドヴィックはディアンヌの想像以上に上の立場にいるらしい。
ディアンヌはそんな人に働き口がないか頼んでしまったようだ。
自分の無知ゆえの大胆さに震えていると……。


「公の場では名前で呼ばないでください」

「おお、すまない……! ベルトルテ公爵と呼ぶのには慣れないな」

「はぁ……」


リュドヴィックは額を押さえている。
さすがのディアンヌでも、ロウナリー国王とこの国の宰相を務めるベルトルテ公爵の名前は知っている。
それにベルトルテ公爵領はメリーティー男爵領の隣だからだ。
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