貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
「ところでどこの家の令嬢だ? 社交界では見ない顔だが……」

「申し遅れました! わたしはディアンヌ・メリーティーと申します」


ディアンヌはロウナリー国王に問われて思いきり頭を下げた。
ピーターを抱えているためカテーシーはできそうにない。


「メリーティー……? メリーティー男爵家か。ああ、俺が小さな頃に大好きだった果実を栽培していたとこだな。懐かしい……! 久しぶりにあの果実を食べたいなぁ」


ロウナリー国王は顎を押さえながら考え込んでいる。
ディアンヌはその言葉を聞いて、大チャンスだと思った。

(メリーティー男爵があるのは、今の陛下が子どもの頃に、うちのフルーツを気に入ってくれたからだとお父様に聞いたことがあるわ……!)

地獄に仏とは、まさにこのことだと思った。
それに、こんな貴重な機会を逃せば国王に直談判できることなど二度とないかもしれない。
ディアンヌは自らを落ち着かせるように深呼吸をする。
家族のためにできることをしなければと口を開く。


「国王陛下にそう言っていただき、大変嬉しいのですが……長雨でほとんど木がダメになってしまったのです!」

「なんだと……?」

「お父様は領民たちのために爵位を返上しようと考えているようです。それで図々しい考えではありますが……助すけていただける方を探すためにここに来ました」

「……そうだったか」


ディアンヌは今のメリーティー男爵領の状況について控えめに、けれど大胆に話していく。
ロランや三つ子のことを思う姉の気持ちをそれはもう大袈裟に……。


「弟は王立学園で国のために学びたいことがあると……! そんな弟な幼い三つ子のためにわたしががんばらねばいけませんからっ」


迫真の演技にロウナリー国王は鼻を啜り、涙を浮かべながら感動しているようだ。
拍手をしながら、何度も頷いている。
リュドヴィックはディアンヌの演技を見透かしているのか、冷めた視線が気になるところだ。
しかし今はこのチャンスと可能性に賭けるしかない。
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