貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

「軽食と紅茶をお持ちしましたよ」

「……!」

「本日よりディアンヌ様の世話をさせていただく、マリアと申しますわ」


部屋にいい香りがするのと同時に、ディアンヌのお腹がグルグルと鳴る。
マリアはダークブルーの髪を綺麗にまとめた落ち着いた雰囲気の女性だ。
マリアは自己紹介をした後に手際よく紅茶を淹れていく。
ベッドの上で温かい紅茶を受け取ったディアンヌは、ほんのりと香る花の匂いにホッと息を吐き出した。
彼女は侍女長を任されているそうだ。
優しく語りかけてくれるマリアにディアンヌの頭にある疑問が浮かぶ。


「どうしてマリアさんはわたしに優しくしてくださるですか?」

「え……?」


つい、カトリーヌのことを思い出してしまう。
それに他の侍女たちもディアンヌに好意的とは思えなかったからだ。
マリアだけはディアンヌに対して優しく見える。
そのことを疑問に思っての言葉だった。


「もしかして、もうカトリーヌが何かしましたか?」

「……えっと」


ディアンヌが言葉を濁すと、彼女は頭を押さえてため息を吐いた。
そこでディアンヌはマリアからカトリーヌの事情について聞くことになる。
カトリーヌは侯爵家の次女で、リュドヴィックを狙ってメリトルテ公爵家に行儀見習いに来ている。
男性やリュドヴィックの前など、表向きはいい顔をしているそうだが、裏では侍女の仕事をほとんどすることはない。
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