貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
これは心からの言葉だと思った。
リュドヴィックの深い隈は、ピーターと向き合おうとした努力のあとなのだろうか。
それに契約結婚ということは、表向きには夫婦になるということだ。
夫婦と意識すると、なんだか恥ずかしいような気もするが、ディアンヌはそんな考えをかき消すように口を開く。


「リュドヴィック様、わたしのことはディアンヌとお呼びくださいませ」

「……!」

「これから夫婦になるのですから、砕けた呼び方の方がいいと思うのです。契約と言えど周りから怪しまれすぎるのもよくないと思いますから」

「それもそうだな」


リュドヴィックは顎に手を当てながら頷いた。


「わたしも精一杯がんばりますね。リュドヴィック様、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく頼む。ディアンヌ」


こうしてディアンヌとリュドヴィックは握手を交わした。
この一件は社交界に大激震が走ることになるとも知らずに、ディアンヌは安心感と満足感でいっぱいになっていたのだった。

リュドヴィックは昨晩から準備をしていたそうで、様々な手続きをスムーズに行なってくれた。
幸いメリーティー男爵領とベルトルテ公爵家は隣同士。
ベルトルテ公爵家から王都も近く、連絡は取りやすかったため、すぐに結婚の手続きは済むだろうと彼は言った。
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