貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜
「ねぇディアンヌ、本を読んで!」

「えぇ、もちろん」

「ボク、部屋から持ってくるね」


ピーターはそのままディアンヌに読んでもらいたいと絵本を持ちに向かった。
その間にエヴァとマリアに話を聞くと、どうやらベルトルテ公爵邸に来てから、あまり料理を口にしないのだそうだ。


「まったく食べないのですか?」

「「……ディアンヌ様」」

「あっ……! ま、まったく食べないの?」


リュドヴィックと結婚したことで、ディアンヌは公爵夫人となる。
二人には少しずつ、そういう風に振る舞うようにこうして指導を受けている。


「やはり大切な人を亡くしたのだから当然、落ち込んでいると思っていたのですが……」

「最近になってもあまり食べないのです。好き嫌いがあるわけではないと思いますが、料理人たちも困り果てていて……」


ピーターがベルトルテ公爵邸に来て一カ月以上経つ。
色々な試行錯誤をしてみても、ピーターの食事量はまったく変わらないままなのだそうだ。
食べるように言うがピーターは首を横に振り、黙り込んでしまう。
「お母さんの料理が食べたい」と言ったこともあるようだが、それも一度だけ。
何を食べていたか説明を求めたが、幼いピーターの言葉は抽象的でわからなかったそうだ。
無理やり聞き出そうとした影響か、それ以上は何も言わなくなってしまったらしい。

(そういえばピーターは五歳よね? うちの弟たちに比べるとたしかに小さい気が……)
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