浪花節だよ統合失調症

発病編

浪花節だよ統合失調症

発病編

おお、これはただごとではない話やなぁ!始まるは、なんの前触れもあらへん、静かなる日常の崩れからや。その男、発症の前までは、普通のサラリーマン、なんの問題もなく働いとった。ところが、その運命の日に東京銀座、タンスの上から「ギーギー」という音が響いてきたんや。なんや、この音は!?ネズミちゃう、幽霊や!そう感じた瞬間、彼の世界は狂い始めたんやで。

翌朝、会社に出て、顔を合わせた倉吉さんに突然言い放つ。「この会社、幽霊に呪われとるから給料が安いんや!」もう、ここからが彼の自生思考の始まりや。思考が勝手に暴れまくる。同期の康子さんの誕生日まで、プレゼントを買いに走るんやけど、その感情の高ぶりが頂点に達したあと、3日後には会社で統合失調症を発症してしまうんや。

そや、なんと恐ろしいことやろう。普通に仕事をこなしつつ、脳内は完全に混乱状態。山手線から目黒のアパートへ戻るも、妄想はエスカレートし、バットで壁をぶち破る。ステレオの音は最大!そんで、警察にまで出動され、手錠かけられるまでやってもうた。

そして品川警察署で、まだ錯乱状態の彼。もう、ここで一言。「今日の巨人の江川は160キロ出すぞ!」と、突拍子もないことを言うんや。しかし、そんな彼を心配してか、会社の部長が迎えに来るんやけど、もはやまともな会話は成立せえへん。

ついには精神病院へ。診察室で妙に素直な返事をする彼、しかし「ガチャ」と鍵がかけられる瞬間、正常な思考が一瞬戻るんや。でも、もう遅い。閉じ込められた部屋には便器ひとつ。夜通しわめいても誰も助けには来んかったんや。

最終的には、精神病院から一ヶ月で退院できたものの、社会の冷たさが待っておった。母親に「また仕事がんばるわ!」と言うたら、「あんた、首になっとるよ」と、なんとも悲しい返事や。会社に行って退職手続きをする時、みんなの顔を見ることすらできんかった。手土産を部長に渡そうとするも、はねのけられたその手土産が無惨にも床に散ったんや。

これが、昭和の時代、精神障害に対する偏見と差別の厳しい現実や。どうや、恐ろしい話やろ?
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