マイナスの矛盾定義
隠し持っていた音響閃光手榴弾を器用に取り出し、床に落とす。
私が知覚しないところで、大音響と閃光が走る。
音響閃光手榴弾――聴覚や視覚を一時的に麻痺させることができる物。
ついでに、私たちの組織の人間が改良しているから使いやすい。
アランの後ろでキャシーが撃ったのは、ただのスターターピストル。
武器なしじゃ勝てない相手に武器を使わない方がおかしいでしょう?
「走るわよ、キャシー!」
耳栓を外したキャシーにそう伝え、外へ出る。
改良されているとはいえ、あれがいつまで効くか分からない。
アランが動かないところを見るとまだ十分効いているはずだけど…早めにここを立ち去った方が身の為だ。
走る。走る。走る。夜の道を駆け抜け、振り返らずに走り続けた。
後ろから走ってきたキャシーが、バズ先生の車が見えてきたところでクスッと笑う。
「楽しそうでしたわね」
「あいつには色々とむかついてたから、遠慮無く仕返しできる機会になってスッキリしたのよ」