マイナスの矛盾定義
「えー、また書類仕事?つまんないなぁ。最近面白かった仕事と言えば、この前のあれくらいじゃん。ほら、麻薬の密売人片っ端から探り当てたやつ。証拠を突き付けてやろうとするごとに新しい対策を講じてくるし、久しぶりに手強くて楽しめたよ。ああいうのは長期戦になればなるほどボロが出てくる…賢い奴らである分、それまでの余裕を失って取り繕おうと必死になってる様が最高だったね。まぁ、殺っちゃったしもう遊べないけど」




ブラッドさんは書類を受け取ってアランに問うた。


「アリスのしていたピアスの構造解明はまだですか」


「下の奴らがやってるが、見たことねぇ構造らしい。クリミナルズには余程の技術者がいるみてぇだな」



シャロンから貰ったあのピアスは、もう私の手元に帰ってこないかもしれない。


できることならあのピアスと一緒にクリミナルズへ帰りたかった…。




アランは不意に私を見下げ、にやりと笑う。


「お前には別の見張りを立てる。今適役を考えてるところだ、精々大人しくしとけ」


こいつとしては、生意気な私が何もできないこの状況にかなり満足しているんだろう。
< 131 / 231 >

この作品をシェア

pagetop