マイナスの矛盾定義
そう言って興味深げにマジマジとこちらを見てくる彼には、ハンバーガーを準備する気がないのだろうか。
「文句あっか?」


「い、いえ!まさか!ただ珍しいな…と」



すると、アランはすっと繋いでいる方の私の手を口元へ持っていき、何をするのかと思えば――ちゅっとその手の甲に口付けた。


刹那、「きゃああああああああああああ」なんていうとても女性達が発したとは思えない絶叫が響き渡る。周囲の人々も何事かとこちらに視線を向けてくる。隣の店の店員まで店から顔を出しているのが分かる。


私はと言うと、アランの奇行の意図が分からず固まることしかできない。



「こいつは“夜の相手”じゃねぇよ」



ぽかーんとしている男性店員の後ろからハンバーガー2つが入っているであろう袋を持ってきた女性店員は、


「ど、どどどどどうぞ!お2人、と、とととてもお似合いだと思います!」


何を勘違いしたのか赤面しながら震える手で押し付けるようにその袋を渡してきた。



「あぁ」と受け取ったアランは、何事も無かったかのように私を連れて店の奥のテーブルまで向かう。
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