マイナスの矛盾定義
「ついさっき貰ったばかりよ。あまりメールの類はしない方なんだけど…折角送ってきてくれたんだし返信くらいしとこうかしら」



メールを1通ずつ適当に返していく。



エリックさんは…まぁ、名乗らないのは非常識だし、返さなくていいか。


陽のはいきなり何よって感じの内容よね…でも、この組織の豆知識ってことは、スパイとしても何か役立つかもしれない。




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To:陽(変態)
Sub:
豆知識って?
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直ぐに返信が返ってきた。



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From:陽(変態)
Sub:

liberty(自由)と
buddy(仲間)を
合わせてリバディーらしい
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……別にどうでもいいことを知ってしまった。
自由と仲間…犯罪者を捕まえたり殺したり拷問したりしてる組織にしては、随分お気楽な名前ね。


私は溜め息を吐き、携帯を閉じる。


でも、これって結構使えるんじゃないかしら?


怪しまれない程度になら、知りたいことを知りたい時に聞ける。


スパイとしてもかなり便利なアイテムじゃない?



そう思い口元を緩めていると、ヒョイとアランに携帯を奪われた。



いきなり何?という視線を送るが、アランはお構いなしに私の携帯をいじっている。


なるほど。こういうこともあるかもしれないし、もしこれをスパイとして使うならかなり気を付けなきゃいけないわね…なんて考えていると。



「ん」


ふと私の携帯をいじるのをやめたアランが、それを差し出してきた。


何をしたのかと疑いながらも画面を見る。


しかし、そこには新しい番号が登録されているだけで。



「これ…」

「俺の番号。電話したら5秒で出ろ」

「分かった、無視するわ」


即答すると、クックッと笑うアラン。


相変わらずの喉の奥を低く震わせるような笑い声。



まさかアランの方から教えてくれるとは思ってなかったけど…やっぱり使えるなら使った方が秘書としても便利よね。


私は新しく登録された連絡先を見ながら、またかき氷を口に入れる。





プール独特の匂いと、リバディーのメンバーの騒がしさが私の周りを包んでいた。
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