マイナスの矛盾定義
「そうなるよ、きっとね」


「世界は貴方の為にあるわけじゃないわ」


「少なくとも今アリスちゃんは僕の為に存在してるようなもんだよ。僕の復讐の為に」



不愉快だ。凄く。



「安心して?アリスちゃんをどうこうするのはしっかり利用した後。スパイだってバレても直ぐに始末するわけじゃない。まずは拷問でもしてアリスちゃんの知っている限りのクリミナルズの情報を聞き出すでしょ?んで、その後人質にしてアリスちゃん達んとこのトップと交渉する。アリスちゃんを始末するのはその後」


「――あぁ?」



思わずドスの利いた声が出た。


ふざけんじゃないわよ。私を利用してクリミナルズに害を与えるなんて、私が許さない。



「怖い顔しないでよ~。ピアスだけは渡してあげるから。…まぁ、あれもそのうち交渉に使う道具にするけどね」



こいつ…こっちを挑発してるわけ?それとも無意識に私に喧嘩を売ってるのかしら?



「貴方と喋っていると叩き潰したくなって仕方ないわ。渡すならさっさと渡しなさいよ、クズ」


「まぁまぁ、そう焦んないでよ。――僕はちょうどさっきあのピアスを手放したばっかだしね」





八重歯が見えて可愛らしいと思っていた笑顔は、こうなった今ではただ憎たらしいだけの笑顔だった。
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