マイナスの矛盾定義
ジャックは、最後までニコニコと手を振っていた。
「……あいつ、苦手だなぁ」



久しぶりに戻ってきたクリミナルズのメンバーの滞在地。


さっきまで何も喋らなかったくせに、部屋に入ったと同時にそんなことを言い出すシャロン。



当然あいつというのはジャックのことだろう。


まぁ、ああいう馴れ馴れしいのは肌に合わないわよね。慣れたらどうってことないけど。




「で?」


シャロンが椅子へと体重を預ける。



「結局どこで失敗したのぉ?」


何だか楽しそう…なのは、気のせいだと思いたい。



私は窓からどんよりとした空を見上げた。


確か…初めてリバディーの本拠地へ行った日も、こんな陰鬱な空だった。



「……8階での情報消去には成功したわ。リバディーの内部事情もある程度把握したつもりよ。でも…スパイだってことは、最初からバレてたみたい」



少し早口でそう言い、シャロンに背を向ける。


こんな顔見られたくない、なんていうくだらないプライド。



最もしてはいけない失敗をした。


スパイだと、それもクリミナルズのスパイだと知られてしまったのは大問題だ。
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