「家族が欲しい」とは言ったけれど
 尚の執筆活動が絶好調なのに対して、私はというと、大学生になってまもなく、今度は父親を亡くすことに。
 当然、自分が喪主を務めなければいけなくて、その時も、尚が何かと手を差し伸べてくれた。
 葬儀だの相続だのと忙しく、母を亡くした時のように悲しむ暇がなかったのは、ある意味よかったのかもしれない。
 それでも、ふと淋しさを感じるような時には、やはり尚がいつもそばに居てくれた。
 5年生の頃、私がこの街に引っ越してきてから、大学までずっと同じ学校だったのは、尚だけ。
 私は大学を中退して就職したが、二人で一緒に過ごすことが多いことは変わらぬまま、今に至るというわけである。
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