鉄壁の女は清く正しく働きたい!なのに、敏腕社長が仕事中も溺愛してきます【試し読み】
駅から十分、五階建ての四階の角部屋、1DKのこの部屋。大学入学のタイミングでひとりで暮しをはじめてふたつ目の物件。

ここは新卒で就職が決まったときに職場に通いやすいという理由で決めたが住みやすく案外気に入っている。

お風呂のお湯はりのボタンを押して、部屋着に着替え冷蔵庫の前に立つ。作り置きしていた切り干し大根の煮物をそろそろ食べきらないとやばい。後は冷蔵庫で解凍していた鶏肉をオイスターソースで焼こうか。

自炊も慣れたものでさくさくとこなしていく。毎日の事だから、手の込んだものではないが、お弁当作りと朝夕の食事作りは自分の気持ちを切り替えるのに役立っている。

手早く準備をすませて、冷蔵庫から発泡酒を出して食事をはじめた。

もちろんタマも自分のお皿から、ごはんをカリカリと音をさせながら食べている。今日も食欲旺盛で安心する。

タマの食事風景をながめながら、晩酌をするのが私の日課だ。

もっと見ていたいのにあっという間に食べ終わると、私の隣にやってきてちょこんと座った。

「ねえ、聞いてよ。とうとううちの会社ダメみたい」

タマはかわいい手で目をこすりながら、興味なさそうに話を聞いてくれている。

「たぶん新しい会社に再雇用されるとは思うんだけど、仕事やりづらくならないといいなぁ」

今の会社の規模はそこまで大きくないが、それゆえ個人の裁量権にまかされるところがたくさんあった。私にとっては働きやすい環境だ。

しかし買収後新しい管理体制になった場合、同じようなやり方が通用するとは限らない。
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