鉄壁の女は清く正しく働きたい!なのに、敏腕社長が仕事中も溺愛してきます【試し読み】
買収の発表があって半年後。
一週間前から本社ビルに掲げられている看板の書き換えがはじまり本日お目見えした。
サンキン電子株式会社改め、本日より『御陵エレクトロニクス株式会社』となる。
私はというと、課長の言う通りクビを切られることもなく、このまま経理課の一員として働けることになった。
職を失わなかったことは大変喜ばしいことだが、買収に伴いこの半年間毎日終電近くまで残り諸々の手続を行っていて、四条さんなんかは『私この先やっていける自信がありません』と毎日泣きそうになりながらも、歯を食いしばって仕事をしていた。
今出川課長は今日の日を迎えるまで『頑張れ』と言っていたが、おそらく今日からも落ち着くまでは、ずっとこんな日が続くと思う。もちろん四条さんにはそんな現実を突きつけるつもりはないけれど。
出社後、いつもとそう変わらない顔ぶれに挨拶をしながら、ロッカーに荷物を入れて経理室に向かう。
経営陣の一部は入れ替わったが社員は希望退職者以外、御陵エレクトロニクスに再雇用されている。
だから顔ぶれはほとんど同じだが、みんななんとなく今後のことが気になるようで、そわそわした雰囲気が全体として感じられた。
財務状況の良くないなか、好条件で買収が合意したのはひとえにサンキン電気が持っていた特許のおかげだ。とにもかくにも新しい体制がスタートする。