鉄壁の女は清く正しく働きたい!なのに、敏腕社長が仕事中も溺愛してきます

「え~~~やばっ!」

 私はどうかしたのかと顔をあげ、様子を窺う。

 四条さんは明るめの髪に、ばっちりメイクとネイルのいわばギャルだけれど、仕事は丁寧だし、TPOをしっかりとわきまえられる子だ。そんな彼女が雄たけびを上げるなんてどうかしたのだろうか。

「んー、四条さん。仕事中だから言葉遣い気を付けようか」

 やっと汗がひいてきた今出川課長が注意をしたが、四条さんの興奮はやまない。

「うちの会社、なくなっちゃうんですか!?」

 立ち上がり、今出川課長に詰め寄っている。その勢いに押された課長は椅子を引いて彼女と距離を取った。

「ああ、そのことね。今日発表だったんだ。実はね、わが社買収されちゃうんだ」

 課長の額にはさっき引いたばかりの汗が、またにじんでいた。

「されちゃうって……そんな簡単に」

 あきれた四条さんの声には、さっきまでの勢いがなく覇気もない。

「どうしよう、せっかく死ぬ思いで就職活動して入社したのに、また就活するの、やだ!」

「いや、落ち着いて」

 のんびり屋の課長が、四条さんをなだめようとしている。

「鳴滝さんっ! どしたらいいんですかっ!」

 私に声がかかったが、会社の決定事項だ。私にはどうすることもできない。

 私にできるのはひとつだけ。

「営業部に伝票の確認に行ってきます」

 椅子から立ち上がると、出口に向かう。

「もう。こんなときまで真面目なんだから!」

 四条さんの声を背中で受けとめて、経理課を出た。

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