とある男の収集癖
「佐枝君ってケンカ強いんでしょ」
「まさか、僕がそんなわけ……」
「中学の時、あの不良ばっかで有名な八代中の奴ら、佐枝君をリンチしようとしたのに、1人で皆倒しちゃったんだよね」
僕のことを得意げに語る藤代さん。
なんで知ってるんだ。あの時は、ちょっとやんちゃしてたけど今は違う。
今の僕はカースト底辺のさえない男子。
それ以上もそれ以下もない。
藤代さんが何故知ってるかは分からないが、僕が秘密にしていることだ。
……僕は、中学の時不良だった。
それも、ケンカ負け知らずの。
というか周りがあまりにも弱すぎたんだ。僕が強い訳じゃない。
それにあの時は不良の集団に入ってリーダーとかやってたけど、今は抜けてるし。
「ハルキって名前を聞いたら不良なら皆ビビり散らかすって本当なの?」
「ひ、人違いじゃないかな」
「ううん、人違いなんかじゃない。嘘ついたら木村さんや木村さんの彼氏に盗んだこと、バラすよ。まあ、バレてもケンカの強い佐枝君ならなんとかなるか」
「分かったから、バラさないで。パシリにでも何でもなるからさ。面倒なことにしないで」
僕の2つ目の秘密、僕が不良だったことは皆に知られたくない。黒歴史だから。もちろん木村さんのことだって、知られたら嫌だ。