Phantom

 月曜日の放課後、零といっしょに歩いているとき、ふと、しにたいな、と声が漏れ出た。

 この頃のあたしは、「しにたい」が口癖になっていた。あたしがそれを言うたびに、零は「心中しよっか」と返事をする。文学かぶれのあたしたちの、ちょっとした悪ふざけだ。

 そんな一連はあたしたちの呼吸になっていたけれど、その日だけはあたしの放つ声色がいつもと違っていて、それに気づいた零がやさしくほほえんだ。


「ほんとに、心中してみる?」


 いたずらっ子のように笑いながら、耳元で囁かれる。零はたぶん、ほんとうに死ぬのがこわくないんだとおもう。


「どうやって?」

「なに、乗り気?」

「一応、聞いてみるだけ」


 ほら、死ぬ手段を知ってたら、「そんな苦しみを味わうくらいなら生きる方がましだ」って思えるらしいよ。これはどこかの誰かの受け売りだけどね。

 零はあたしの手をとりながら、うーん、と思索する。


「ふたりで死ぬんだったら、ぼくが睡を殺したいな」


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