Phantom
「あたし、零にころされちゃうの?」
きゃー、とふざけてみせると、零はくつくつと笑った。
「睡は眠るのがすきだから、睡眠薬を飲ませてあげよう。そうしたら、痛くないしね」
「ころすくせに、やさしいのっておかしくない?」
「その矛盾がいいんでしょ」
うん、ちょっと歪んでるね。だけどその妄想をもっと聞きたいと思ってしまった。あたしもすこし、歪んできているのかも。
「もっとくわしくー」
「吸収しやすいように、砕いた睡眠薬をすこし多めに飲んでもらって、睡が眠ったら、ぐさり、でしょ」
「零はどうやって死ぬの?」
「そのあと、自分で自分を刺すよ。そうしたらぼくたち、肉体を超えて繋がって、深く溶け合えるかもね」
喉が渇く感じがした。
性行為を繰り返しても、もっと繋がりたいという渇望はとどまることを知らなくて、そんなときに現れた「心中」という選択肢はひどく甘美に思えた。
ちょっとだけ怖かったけれど、零の計画だと、あたしは眠っている間にふらっといなくなれる。しかも、最愛の零に肉体を暴かれて。深くて、触っちゃいけないところをかき乱されて。
どうしよ、死なないために死ぬ方法を聞いたのに、どんどん死に向かう自分が止められない。だって零が、こんなことを言うから。
死の色が濃くなって、どうしようもなくなったあたしは零のとなりでいつかくる最期を願った。