Phantom
言霊、といういかがわしい言葉がある。言葉に宿る霊力のことで、口にした言葉は実現する、みたいなもの。ほんとかよ。
まあ、霊力なんかはよくわからないけれど、心理学なんかでは「予言の自己成就」なる理論が存在するらしい。つまるところ、口に出した言葉が実現するという言説は、あながち嘘じゃないのかもしれないのだ。
しにたい、しにたいと口にし続けたあたしは、とうとうその日を迎えてしまった。言ってしまえばそれだけの話。
「ほんとに、いいの?」
零が最終確認みたいな念の押し方をする。いや、実際そうなのだろうけど。
うん、やっぱり今日死のう。明日がくるのが耐えられない。不幸パラメータは昨日と今日で振り切れたので、今日、あたしは死にます。
気丈に振る舞ってはいたけれど、死にたい気持ちは確実に膨らんでいた。
躁と鬱をくり返す病気があるじゃない。あそこまでひどくはないけれど、近しい波って、たしかにある。
あたしは落ち込んだあとに、すこし正気を取り戻してから、ぱっと自傷行為をする癖がある。それが今回はいつもよりちょっと酷かったから、零に助けてもらおうかな、っていうだけ。
それに、零と一緒なら最低を最高に変えられる。だったら、しぬしかないじゃん。ね、簡単な話でしょう?