Phantom
処方箋を受け取って、隣接する薬局に向かおうとしたとき、スマホに着信が入った。
見ると、今在詠だった。出ないと後から面倒なことになるので、応答ボタンをタップする。
『もしもし。おまえ、いまどこにいる?』
「病院」
『へえ、生きる気あるんだ』
こいつはいつだって一言多い。詠と関わりを持つようになったのは零が死んだ後からだけど、なぜか彼はいつも、嫌味混じりであたしへの生存確認を欠かさない。あたしはおまえのせいで、いつも痛い。どこかが鈍く痛むのだ。
だが、言い返せない。詠の同胞を奪ってしまった罪の意識は、責任となってあたしを傷つける。これは零のファントム・ペインとはまた違う痛みだ。
「現世から距離を置くには眠るしかないのよ」
『あっそ。このあと予定は?』
「午後から友達と会う」
薬局の前で電話を切ろうとすると、向こう側から、「ちょっとまって」と制止される。その声が零にちょっとだけ似ていて、またもどこかが痛んだ。
『終わったら迎えに行くから、連絡しろ』