Phantom

 中高生のときに根付いたカースト意識は、大学生になるとだいぶ和らいだが、それでも人間関係における「上下関係」を気にせずにはいられない。あたしはたぶんそういう病気にかかっている。

 たとえば、ネイビー髪の彼女は、この3人グループでは「上」だと思う。一見対等に見えるけど、あたしたちは全然対等じゃない。

 彼女は大きな声でわらう。たまに会話に茶々をいれて、笑いをとり、場を制圧する。ほら、この時点であたしは全然違うでしょ。

 あたしはどちらかといえば、茶々を入れられる側。いじられキャラ、なんて都合の良い言葉もある。

 上の立場の彼女たちを気持ちよくさせる立ち位置。あたしはそう立ち回ることによって居場所を手に入れたが、それがどうしても苦しいときがある。


「てかさ、睡ちゃんはどうなの? 前に双子くんの話してくれたじゃん」


 ふいに向けられた会話のベクトルを避けることができずに固まった。

 実のところ、さっきからずっと頭がいたくて、彼女たちの会話は全然あたまに入っていなかった。いつの間にかふたりの恋愛の話が一通り終わったのだろうか、会話の矛先がこちらに向き、背中に緊張が走る。


「ほらほら、昔付き合ってた双子のお兄ちゃんが死んじゃったって話。あれからどうなの? ほかに良い人見つけようって話だったじゃん!」


 そんな話、してたっけ。

 ほかに良い人見つけようって勝手に言ったのは多分あなたたちだし、あたしは別に、他の人を見つける気なんてない、のかも。

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