Phantom
余計なことを言ってしまったのは確かだった。言い訳、言い訳、言い訳、と頭の中をぐるぐる巡らせる。皮肉なことに、言い訳クリエイターだったあたしの脳みそは、こういうときに限ってなにも働かない。
「え! あの、双子の弟と会ってるの?」
茶髪ボブカットちゃんがすごい勢いで捲し立ててくる。
会っていることは否定できないから頷くと、たぶん意味を曲解された。彼女たちは、あたしと詠が恋愛的な関係にある、もしくはそういう関係に発展するものだと解釈したみたいだ。
質問責めに遭う。頭が働かない。どうしよ、眠りたい。
それに、ネイビーの子が気になる。彼女はふやけた紙ストローでアイスコーヒーを吸いながら、あたしの手元をじろじろと見ていた。ちょっとだけ、こわかった。
そして、鶴の一声。ネイビー髪のこの子の言葉には、他の子の発言を封じて、その場を掌握する魔力がある。
「え、てかさー」
彼女はストローでグラスの中をかき混ぜ、氷をカラカラと鳴らす。胃がきりきりと痛んだ。なんだかすごく、嫌な予感がした。
「双子の兄が死んだからって、弟に手出すの、倫理観ヤバくない?」