Phantom

 倫理観がヤバい、と友人に言われること自体には納得している。

 彼女たちは、あたしが死にたがっていることとか、詠があたしを死なせないようにしていることとか、そういう詳しい事情を知らない。

 詠と一緒にいる理由をきちんと説明しなかったのはあたしの方だ。

 面倒だから言わない選択をして、それなのに口を滑らせて余計なことを言ってしまったから、断片的な情報から「倫理観が欠如している」と判断されただけのこと。

 まあ、あたしがわるいかも。だけどあたしは別に、詠に会いたくて会ってるわけじゃないのに。こうやって詠に生きているところを見せないと、実家に連絡されたり、警察に届けられたりと、面倒なことになるから、会っているだけ。

 言いようのない不快感を誤魔化し切れずに、ブランケットを深く被る。

 零のにおいと同じで最悪だ。嫌でも、左手で握っていた零の体温を思い出してしまう。痛いよ、目に見えない何かが痛い。


「大丈夫か」


 枕元に詠がやってくる。向こうに行ってほしいけれどそれを真っ向から伝える気力はない。

 詠のせいだ。零が死んだあと、あたしに関わろうとするから。あなたがあたしのそばにいるせいで、あたしは零の後追いすらできないし、零の存在を思い出してしまうし、あたしは友人から誤解される。


「ねえ、詠」

「ん?」

「あたしたち、どうして会い続けるの?」


 詠は訝しげに眉をひそめた。



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