眩暈ーげんうんー
「絶対に他の人には内緒にしてくださいね」

あたしは緊張して、自分の唾を飲み込んだ音がはっきり聞こえるくらいだった。

「鈴宮さん、目を閉じてください」

言われるがまま目を閉じると、唇に何か感じた。

何だかビリビリする、目を開けると先生が目の前に。


ーー今、先生にキスをされたーー

「文化祭に来てくれて、僕の作品を褒めてくれた時から鈴宮さんが好きです」


嘘だ、先生があたしを?



「僕、実は教師を辞めて、絵も諦めようとしていたのです。鬱になりかけていました。僕は絵が好きだけれど、絵に対して一生懸命な人間が周りに居なくて、教師になった意味すらなかったんじゃないかって。だから眩暈《げんうん》は最後の作品にするつもりでした。でも、鈴宮さんが目を輝かせて僕の絵を褒めてくれた時、救われたのと同時に、恋してしまいました」

そんな風に言われると先生の顔をまともに見られない。

まるで心を先生にわしづかみにされてるみたいで、今までにないくらい胸が高鳴ってる。


「これが先生の秘密です。鈴宮さん。今のは忘れてください。今まで通りにいきましょう。感情が高ぶってつい、してしまったので恥ずかしい。それに僕は教師ですから、生徒を好きになるのはいけないのです。この気持ちはなかったことにしてください」


先生の秘密を知ってしまった。
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