眩暈ーげんうんー
「おっす! 田中絵音でぇーす! 元は漫画研究部で腐女子やってたんですけど、細谷大先生も腐男子らしくて、最近仲良くなっちゃいました」
やたらテンションの高い子だ。
美術部に居たら大分目立つだろう。
「絵音さんは絵が凄く上手なんですよ。男性の身体つきをよく研究していらっしゃる。漫画研究部に居るだけじゃ、あまりにももったいないし、話も合うのでね」
そういや、細谷先生は漫画研究部の副顧問。
先生がスカウトするなんて、余程絵が上手なのか。
……あたしよりも?
いや、そんなはずはない。
所詮は漫画研究部の画力だし。
というか、先生と距離がやたら近いのが嫌だ。
それに先生が田中さんを名前で呼んでる。
あたしの先生なのに。
仲良くしないでほしい。
「そうそう、細谷大先生!あたしのとっておき見せちゃいます!じゃじゃーん」
田中さんは黄色いファイルバッグから何枚かイラストを出したようだ。
「わあ、なんて素敵な絡みでしょう、たぎりますね」
「でしょでしょ。ここは気合い入れたんです。それになかなかにエモいと我ながら思ってて」
2人で楽しそうにしてるのが、羨ましい。
先生が田中さんと楽しそうに創作について語り合ってる。
先生の話のレベルに田中さんがついていけてるのが凄いな。
いつも心地よく感じている絵の具の匂いが、急に嫌になってきた。
胸に突っかかった違和感が、どうしようもなくて目にうつる何もかもに吐き気がする。