さよなら、サンクチュアリ


「…お願い…助けて」


ぽつりと、溢れでたのは哀願。

他に頼る人もいなかった。



へたり込み、縋るように伸ばした手はそのまま空を切る。
だらりと垂れた手を取り両手で包み込んだコイツは、満足げに微笑んだ。



「いいよ。その代わり何をくれる?」



場にそぐわない爽やかさで。



「自分の願い事だけ叶うなんて、おかしいでしょう」



眩しいくらいの和やかさで。



「見返りに、姉さんをちょーだい?」





その、美しい唇が弧を描く。

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