春が終わるとき
───春。

春夏秋冬の中で1番美しい季節だと俺は思う。

イメージカラーはピンク。
桜に引っ張られまくった色。

新しい環境が始まり皆がせわしなく動き出して、あっという間に過ぎていく短い季節でもある。

4月を過ぎればもう春じゃない。そんな感じが俺の中ではしている。だから春はたった1ヶ月しかない短く、美しい季節なのだ。

俺───新道 康太(しんどう こうた)───は3月に高校を卒業してこの春、大学に通いだした平凡な男子学生。

周りと同じように、忙しなくすぎていく新しい生活に早く慣れようとこの貴重な春を無駄に消費している。

───4月30日。

「こはるー、つぎの講義室どこだっけー」

「次は3号館の3階っぽい!」

俺はたまたま一緒に入れた幼なじみの
────宮野 好桜(みやの こはる)───と大半の日々をすごしていた。

こはるとは幼稚園からずーっと同じで、家も隣同士で恋愛漫画みたいな関係性だ。

例に漏れず、恋愛漫画の男子みたく、俺もこはるの事が好きだ。もちろん恋愛感情としての好き。けれど告白は出来なかった。もし告白して関係が崩れてしまったら?怖い。1歩が踏みでなかった。だから俺は高校も、大学もそれっぽい理由をつけて同じところに通うしかなかった。

男として情けないとは思いつつ───



「なぁ、これ間に合う??あと3分。」

「いや、康太が売店で肉まんとか買ってるからでしょ!ほら、走って!バカ!」

俺達は慣れないキャンパスを走り抜ける。

これが大学生。自由で、バタバタと過ぎていく。春みたいな4年間。恋愛してバイトしてたくさんの思い出とともに脳裏に焼き付く短く、、けれど濃密な4年間。

───そう、思っていた。

春最終日の今日までは。




< 1 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop