春が終わるとき
俺たちは、しっかり5コマ分の講義を受け、その後駅までは一緒に帰ってそこで別れた。
俺は隣街の居酒屋でバイトがあるからだ。
こはるは駅前のマンションに家を借りている。
大学まで徒歩10分。贅沢なやつだ。
「じゃーなー!」
「気をつけてねー」
俺はこはるに別れを告げて2分後に出発する電車に、乗り遅れないように小走りでホームに向かった。
難なく電車に乗りこんだ俺は席に座ることなく吊革に捕まる。
ぼーっと電車内でこはるの事を考える。
俺はこはるの事が好きでたまらない。こはるの事が好きな男として不適切かもしれないが、なぜあいつに彼氏がいないか分からない。
顔も通りすがる人達が振り返るくらい可愛いし、スタイルもめちゃくちゃいい。それでいて、天真爛漫のくせに真面目。面倒見もよくて、子供も大好き。
好きになる要素の詰め合わせセットなのだ。好きすぎる身としては他の男に取られるんじゃないかと毎日が気が気じゃない。
現にこはるは、小学校からモテ続けている。ラブレターを渡してくれと頼まれたのも両手じゃきかないくらいだ。
だがこはるは、そういうのが想像できないみたいで断り続けている。
俺は幼なじみだからこはるにベッタリとしていてもキモがられないが、普通なら俺はヤバいやつなのだ。
「はぁ、、、」
俺は考えていて自然とため息が出た。
なぜならこれ以上の進展が期待できないからだ。
こはるも恋愛に興味無さそうで、俺は俺で、1歩先に進めない。ため息は増えるばかりだ。
───次は〇〇、次は〇〇───
「よしっ」
車内アナウンスが聞こえ俺はバイトへと気持ちを切り替えた。