耽美なる箱庭
01:憂鬱モーニング
6時10分。アラームが鳴る。
まだ夜中だと思っていたのに、もう朝になってしまったらしい。
徹夜をしたせいで、無意味になってしまった時計の起床アラームを止める。疲れ眼を手のひらでごしごし擦ると、脳内に出てきた幼なじみが擦るなと怒った。
「あれ? 千佳くん、帰ってきてないや」
無駄に広い家は、しんとしていて人の気配がない。
それは6つ上の幼なじみが、まだ帰ってきていないことを暗に示していた。
どうせなら一緒にベッドに入って眠りたい。少し待っていようと、わたしはキッチンに行き、甘いカフェオレをマグに入れて、玄関先でちょこんと体育座り。
待っていた時間は、おそらく30分ほど。
家の門のロックが解除される音がして、わたしは玄関のドアを半分だけ開けた。
「……千佳くん、おかえり」
「おい、裸足で出てくるな。風邪ひくだろ。家の中戻れ、すぐ行くから」
「お迎えしようかなって」
わたしの姿を見つけ、帰ってきて早々に、小言をぶつけてくる過保護な千佳くん。
でも、あからさまにしょぼんと落ち込むと、呆れた顔で走ってきた千佳くんが、雑に頭を撫でてくれた。
「──ただいま、乃々」
高い外壁と木々に囲まれた家。
過保護な幼なじみの要望もあって、常に最新のセキュリティを利用している家は、まるで世界から孤立した箱庭。
この安心できる箱庭が──、
わたし、泗水 乃々と幼なじみである藺月 千佳の住まいだ。