耽美なる箱庭
──「(ん?)」
霞む視界に広がるのは、一面の黒と月明かり。
まだ意識が覚醒してないのか、ねむくてぽやぽやしてしまう。
近くにあるはずの体温を探すも感じられず、身体を起こしてあたりを見渡すと、ドアの向こうから話し声が聞こえた。
「(ちかくんでんわ……?)」
眠気に抗って、耳を澄ませる。
音を立てないようにベッドから抜け出すと、千佳くんサイズの服を着せられていることに気づいた。風邪ひかないようにかな。
「──執拗い、断る。他のやつを探せって言ってるだろ。…………あ? 何度も言わせんな。……もう切るぞ。────美麗」
美麗……?
誰なんだろう、電話の相手。揉めてる気がするけど名前的に女性……? もしかして好きな人?
気配を消して、覚醒しない頭でぐるぐる思考を巡らせていると、電話を切った千佳くんがドアを開けた。起きてるわたしに気づき、目を丸くする。
「どうした」
「ちかくん、となりいないから」
「悪い。仕事の電話だ」
こんな遅くに? おんなのひとと?