耽美なる箱庭
強引に舌が侵入してきて、衝動的に身体を逃がしてしまう。乱暴にされてるわけじゃなく、丁寧に扱われてるとわかるのに、未知の感覚に足が竦んだ。
なにこれ、なにこれ……。息できない。
「鼻で息して、のの」
「は、っふ」
「舌も逃げてる。ちゃんと出せ」
命令形だけど、無理強いはしてこないのが千佳くん。
わたしが慣れるまで、舌を吸ったり歯列を舐められたりして、反応を見て楽しんでいる。
ようやく舌を絡めることを覚えて、鼻で息をするのにも慣れた頃──、ツゥーと背骨に沿うように指先を滑らされ、両足の力が一気に抜けた。
「っ、ちかくん、ばかっ」
なんで楽しそうなの! むかつく!
わたしの危うい腰を支えて「ふ」と一音で笑った千佳くんが、お姫さま抱っこでベッドまで運んだ。わたしの余裕のなさは、縮まらない年の差のせいかな。
「教えてほしいって、ののが言ったんだろ?」
「そ、そうだけど……っ!」
「自立した大人になりたいなら、このくらいのキスで音を上げないよな?」
「……っ! あげない! まだできる!」
威勢よく言葉を返したけど、自信はない。
でも、
「────偉いな、俺の乃々」
俺のって言われて、気分がいい。
降りそそぐ妖しい双眸に蕩けて、わたしは甘い口付けに浸った。