耽美なる箱庭
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眠る姿を眺めるだけで、不思議と口元が緩んだ。
これまでも可愛く寝息を漏らす唇に、勝手に口付けをしていたけど、それとは比べ物にならない陶酔。
──キスの練習をしてもいい、なんて。
鴨が葱を背負って来る状況を与えられて、紳士的な対応を取れるほど俺も大人じゃない。幼なじみを言い訳にノーカンにもさせない。キスはキスだ。
「お前を人前に晒すなんて、冗談じゃねぇよ」
艶やかな天使の輪ができている髪を撫でれば、無意識に乃々が擦り寄ってくる。
可愛さに悶えて両瞼に唇を押し当てると、擽ったそうにくぐもった声で唸られた。俺の体温を探す乃々を動画に収める。記録に残すのは大事だ。
〈──諦められない。会わせて。それが無理なら今すぐ来て〉
画面上部、バナーで出てきた通知。
早朝からうぜぇな、既読無視でいいだろ。どうせこの後仕事で会うんだから、返信するだけ時間の無駄だ。
「いってきます」
最後にもう一度、寝顔を目に焼き付ける。
乃々と過ごせない憂鬱な朝に、ため息が零れた。